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常楽寺美術館。別所温泉の常楽寺境内にある美術館です。ここで今行われているのが、「鬼女紅葉展」。
鬼女紅葉というと、今は長野市になっていますが旧鬼無里村に昔住んでいたという鬼になった女性の話です。
京都の応天門を焼いた罪に問われた伴大納言善男が伊豆に流され、その子孫にできたのが、呉葉という女の子。美しい女性に成長し、お金持ちに強いられたことから自分の分身を嫁入りさせ、その後いろいろあって権力者の侍女となり、正妻を亡き者としようとして捕まり戸隠に流されました。そして鬼女となり人々を苦しめたのですが、将軍平維茂(たいらのこれもち)に討たれます。戦いの前に、維茂は北向観音にお参りし、宝剣を授けられてそれによって紅葉を討つことができた。ということで別所や北向観音に関係してくるのです。
別所温泉駅から温泉街に少し上がった所に駐車場がありますが、その東側に「将軍塚」と呼ばれるちょっとこんもりした塚がありまして、維茂のお墓とも言われています(実際はこの地域の豪族の古墳だということですが)。
こうした縁があったからでしょうが、北向観音の本坊である常楽寺の美術館で企画展が行われています。
最初の写真は、平維茂と鬼女紅葉の闘いの場面の浮世絵。幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師の大蘇芳年(たいそよしとし)が描いたもの。
そして、法隆寺金堂の壁画模写も手掛けた日本画家の荒井寛方による絵巻物。紅葉の誕生から都に行って権力者の侍女になり、悪事が発覚して戸隠に流されるなど、鬼女紅葉の一連の物語が絵巻物になっています。これは、常楽寺の元住職半田孝海さんが荒井画伯と親交があり、画伯の申し出で紅葉の物語についての資料を画伯に渡し、それに基づいて描かれたものです。その後荒井画伯から常楽寺に贈られたのだそうです。企画展の開催期間は、6月30日までの前期と、7月9日から12月25日までの後期です。
ところで、常楽寺が管理する北向観音。ここの本堂の中には、維茂と鬼女紅葉の闘いを描いた絵が飾られています。このお堂の中には、古銭でできた龍だとか、善光寺地震の際、その前に北向観音にお参りしたがために難を逃れた人が奉納した絵だとか、見所がいっぱいのところですね。それだけいろんなエピソードがあってからこその宝物なのでしょうが。いろいろ楽しめます。(F森)