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常楽寺美術館の企画展 北向観音のお姿に癒される

今年後半の常楽寺美術館の企画展です。今回は、明治から昭和にかけて仏画などの日本画を制作した荒井寛方(あらいかんぽう)と、彼が関係した画家たちの絵が基本テーマです。
 最初の写真を見てください。北向観音を描いた「観音下図」です。千手観音菩薩のやさしいお顔。苦しみや不安な気持ちがあっても癒される、そんな感じの表情です。
荒井寛方は、法隆寺の金堂壁画を模写する主任画家に選ばれるなど、「仏画の寛方」と言われる優れた画家なんですが、常楽寺や戸隠に伝わる鬼女紅葉伝説や、北向観音堂に関係する絵も多く残しています。この美術館にとって、とても関係の深い人なのです。
荒井寛方は栃木県出身で、「最後の浮世絵師」と呼ばれる月岡芳年の弟子である水野年方の門下に入りました。
そして、38歳の時、インドの詩人タゴールに招かれて彼の学校で日本画を教える教師となります。そんな経験から、2枚目の写真にあるように、アジャンダ石窟群の壁画の模写やタゴールの肖像画などインドを題材にした作品も描いています。
寛方が常楽寺に関係する作品を手掛けたきっかけは、常楽寺五十五世の半田孝海師との交流です。昭和6年頃に二人は出会い、鬼女紅葉伝説を描いた「紅葉狩絵巻」十六段を再興院展に出品し、その後全作品を常楽寺に寄贈しています。
この美術館の入口に「仏教を通じ平和を願う」碑があるのですが、これは、原水爆禁止など平和運動に尽力した孝海師と寛方の交流と世界平和を希求した友情を記念して、孝海師の息子で常楽寺五十六世の孝淳師が建立したものです。
 企画展では、寛方の師匠の師匠である月岡芳年やその弟子である右田年英など、寛方に関係する画家たちの絵もたくさん展示されています。
 3枚目の写真の右側は、月岡芳年の鬼女紅葉伝説で、平維茂(たいらのこれもち)が鬼女に向かって刀を抜こうとしている場面を描いています。いかにも「最後の浮世絵師」の感じ。
また、左側は、右田年英の「名誉十八番真田幸村」で、関ケ原の戦いのあと九度山に幽閉された幸村の姿と、後ろには妻と息子も描かれています。
 美術館の今回の展示の中で、企画展のテーマとは外れるのですが、注目したのが「地蔵菩薩立像」です。年の若そうなお顔もお地蔵様の表情が優しい。
この地蔵菩薩立像なのですが、「将軍塚」の近くにある六角形の珍しい形のお堂「七苦離地蔵堂」のご本尊だったのだそうです。常楽寺にあった仏像で、平安時代後期の彫刻の特徴があるということです。地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上の六道をぐるぐる回る衆生の苦しみを除こうというお地蔵様。端正なお顔を見ているだけで心が落ち着きます。(F森)

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