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前山の中禅寺といえば、平安時代末期から鎌倉時代初期に造られたという薬師堂やその中の薬師如来像など、小さいお寺なんですけど、国の天然記念物や県宝の文化財がいくつもあります。
その中禅寺。「山号」は「龍王山」なんです。だからお寺の正式名称は「龍王山 中禅寺」。
で、「龍王山」ってどこ? ということで、今回はこの山を取り上げます。
標高は980mほど。すぐ南にそびえる独鈷山の陰に隠れてそれほど目立たない山ではあるんですが、とんがった山が特徴です。
まだ登ったことがないのでレポートできないのですが、ネットの登山記録を見るとかなり険しい山のようです。見た目も「あんな槍の穂先のような山に登れるの?」
ところが、ここを登って雨乞いをすることが昔あったそうです。
「雨乞い」は、塩田にとって、少し前までは毎年のように行っていた祈りの儀式。
雨が全国平均の半分くらいしか降らないのに加え、千曲川のような大きな川がない塩田。穀倉地帯であるにも関わらず、米作りに必須の水の確保には苦労しました。
そして、日照りの時に行われたのが「雨乞い」。
塩田各地でよく行われたのが「百八手」とか「千駄焚き」と言われるもの。ため池の堤の上で、たくさんの松明を燃やして「あーめーふーらせ たんまいな」とみんなでお祈りする雨乞いですが、お地蔵様を川に投げ込んで、怒ったお地蔵さんに雨を降らせてもらうとか、変わった雨乞いもありました。
そして、山に登って雨乞いのお祈りをする形もあるんです。
その一つが、この龍王山。
雨が全然降らない時、住職と当番になった地元の人たちがこの山に登り、雨が降るまでお祈りする。何日にも及ぶことがあったと思いますが、狭い山頂でいるのは、自分が当番になったとすれば「こわい!」
沢山池ができたり、丸子の依田川の水を塩田に引き込んだりして、前に比べれば水には苦労しなくなりましたが、昔はそんなことまでする必要があったんだという、塩田の農家のたいへんさも感じつつ、今は、そういうことをあまりしなくて良い時代になったと、ちょっと複雑な思いもありますね。(F森)