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塩田で「代表的な山は?」と聞かれれば、多くの人が「独鈷山」と答えるでしょう。東塩田の人にとっては、「安曽岡山」があって独鈷山は見えない所が多いんですけどね。別所温泉の人も「女神岳」があって見えない。
でもまあ、標高が1266メートルと、塩田では一番高い山だし、東西に長くのびた稜線が折れ線グラフのように凸凹していて特徴的。金色の稲穂が揺れる田んぼの奥にそびえる山もいいし、雪をかぶった姿も美しい。
そして、なんといっても名前が普通の山とはちょっと違う。
「独鈷」というのは、真言宗などの密教系の宗派で使う仏具です。その仏具がこの山の名前の由来です。
で、なんで「独鈷」なの?
その昔、平安時代、真言宗の開祖である弘法大師は、宗派の拠点をさがして塩田に来ます。そして、南にそびえる山を見て、良い候補地と見たのです。調査して谷の数を数えると99ありました。「百の谷があればここに置くのだが。残念」と、結局、百の谷があった高野山に金剛峰寺を建てたのです。
そして、塩田を去るとき、独鈷山の支峰である「弘法山」に仏具の独鈷を埋めました。
もうお分かりでしょう。これが山の名前の由来のエピソードです。
弘法山のすぐ下にある「前山寺」は真言宗のお寺で、もともと弘法大師が独鈷山で開いたという言い伝えがあります。今も弘法山の頂上のすぐ下には「岩屋堂」ともいわれる大師を祀ったお堂(奥の院)がありますし、江戸時代の地図には独鈷山の頂上の所に「奥の院」と書かれています。
「独鈷を埋めた」というのは言い伝えに過ぎない、のかもしれないのですが、人々が弘法大師を敬い、「独鈷山」や「弘法山」といった山の名前があることや、前山寺や中禅寺という、大師が創建したというお寺を何百年も守ってきたことは確かです。
前山寺の奥の院があったという独鈷山の頂上から塩田平を見下ろすと(3枚目の写真)、こんな眺めのいい所に金剛峰寺を創ってくれていたらなあ、と思います。(F森)