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「塩田の館」。塩田平を眼下に望む前山の高台にある観光施設です。平成4年(1992)に上田市で造ったもので、地元の団体が運営してきました。観光情報の提供のほか、食堂もあって、手打ちそばやおやきが人気でした。特にそばは「里帰りそば」と銘打って遠くからもお客さんが来ていました。これは、真田信之公の後の上田藩主仙石氏が、1706年に今の兵庫県出石市に移った時に信州そばの技術を出石に伝え、今「出石そば」と呼ばれている小皿に盛ったそばを模したもの。5枚の小皿に盛られたそばがおいしかったですね。
でも、コロナ後にこの団体が撤退してしまいました。地元では、観光の拠点として何とか残してほしいと市に強く要望し、施設を民間事業者に貸して日本遺産などの観光情報も提供してもらうことになりました。
昨年から、松茸料理の「美し園」を経営する会社が借り受け、季節限定の松茸料理のほか、「日照庵」という名前の店であんかけ焼そばを提供しています。
入り口を入ると、まずは日本遺産の紹介コーナーです。各種パンフレットが置いてあるほか、安楽寺や生島足島神社、信濃国分寺など日本遺産の構成文化財をきれいな映像で流してくれる動画もスクリーンで見ることができます。
特に、今年導入されたのがバーチャルリアリティで塩田平の風景を体験できる装置です。
ゴーグルをのぞくと、視界いっぱいに広がる画面の動画を見ることができます。
放映時間は約5分。生島足島神社や安楽寺、ため池に別所温泉の岳の幟の様子など、上空からの映像も豊富で、普段見ることのできないところも。「あー、あそこはこんな風になっているんだなあ」と新鮮な感じがします。
ゴーグルを顔につけるだけでいいので、手軽に楽しめます。
そして、隣の食堂のスペースで、待望のあんかけ焼きそばをいただきます。
あんかけ焼きそばは、今や上田のソウルフードといってもいいでしょう。市内のいろいろなお店で出してくれます。特に有名なのが日昌亭と福昇亭でしょうか。元々、長野市の権堂町で大正の終わりころ創業した福昇亭のご主人の子どもさんたちが上田でそれぞれの店を開きました。極細の麺が特徴です。この麵を作っているのもご兄弟が創業した杉坂製麺所。
日照庵の麺もこの製麺所のような縮れの強い極細麺ですね。見た目も日昌亭と福昇亭のものに似ています。
この施設、当面の営業は、平日のお昼に限定。日本遺産の紹介コーナーもその時しか利用できませんが、これから営業時間が延びていけば、塩田の観光拠点にもなっていくと思います。なにより、前山寺や龍光院、中禅寺といった名刹もあり、あじさいが咲き誇る「あじさい小道」もある風光明媚な場所にありますからね。多くの方に日本遺産の情報もおいしい焼きそばも楽しんでほしい。(F森)