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今回ご紹介するのは、別所温泉にある常楽寺の石造多宝塔です。
常楽寺は、北向観音の本坊です。平安時代の初め頃ということでお寺に伝わっている話によると、「別所の東北にある山のふもとの池の底が突然揺れ動いて大きな火口ができ、そこから紫煙が立ち上り、今の北向観音の桂の木にとまった。その先に金色の観音様がおられたのでお堂を建てて安置した。火口跡には木造の多宝塔を建立した」ということです。
別所で火山の噴火ですか ということで、荒唐無稽には感じるかもしれませんが、常楽寺や北向観音はそれだけ神秘的な存在だったのでしょう。
この火口跡に建立されたという多宝塔ですが、最初は木造で、その後、火災で焼けてしまって、鎌倉時代の中頃に、石の多宝塔にしたのだそうです。それから760年近くたっていまして、今は国の重要文化財に指定されています。国内の石造多宝塔で重要文化財になっているのは全国で2カ所だけということです。
高さは2.7メートル。見上げる高さです。石でできた塔なので、私も最初はイメージできなかったのですが、言ってみれば2階建ての仏塔ですね。安楽寺や前山寺の三重塔も仏塔の一種で、それらは大きいし木造で3階建てなのが、この多宝塔は2階建て。二重の塔と言ってもいいかもしれません。仏塔なので屋根には「相輪」があります。
これがある場所は、常楽寺の堂々とした本堂の脇を通って奥に少し行ったところ。背の高い木が立ち並ぶとても静かな林の中にあります。一人この塔の前にたたずんでいると、気持ちが落ち着きます。(F森)