「小説 独鈷山」。東前山地区出身で、コカリナ創始者の黒坂正文さんが2023年に出した小説です。
話は、昭和30年代の塩田。東前山に住む小学生が、東京から転校してきた子と出会い、一緒に遊んだり農作業をしたりする中で友情をはぐくみ、でも最後に別れが待っている、そんな物語です。
この話が映画化されることになり、シナリオもでき、映画作りも本格化してきています。監督は、別所温泉在住の野村展代さん。シナリオも手掛けています。
小説の中に出てくる塩田の様子と言えば、道祖神祭りやどんどん焼き、ため池での水泳やスケートなどの子どもたちの遊びのほか、田植えや水の管理、稲刈りなどの農作業なんかも出てきます。
そして、クライマックスの場面は「百八手」。降水量が少なく、千曲川のような大きな川のない塩田で昔から行われてきた雨乞い行事で、ため池の土手でたくさんの松明を燃やして、みんなで「ア~メ フ~ラセ タンマイナ」と大きな声で祈るものです。
話の中では、雨が降らずため池の水もいつもの年の半分ほど。塩田のそれぞれの地区のため池で百八手をやることになります。東前山では塩野池。たくさんの松明に一斉に火が付き燃え上がります。そして高台の塩野池からは、甲田池や男池、舌喰池などの池で火が燃えているのもよく見えます。その甲斐あって雨が降ってきた・・・
本当の雨乞いの百八手は、もう30年ほど行われていないようなのですが、4年前の「ため池祭り」などで何回か再現されました。松明の火は、ため池の土手の上だけではなく、池の水面にも映って迫力満点。見ているだけでしたが、圧倒されましたね。
その百八手が、映画のロケでふたたび実現しました。しかもその場所は、小説の中と同じ塩野池。
これは写真を撮ってブログに載せねば、と意気込んでいたのですが残念ながら行けず、野村監督や塩田まちづくり協議会の佐藤事務局長が撮られた写真を拝借。
行われたのは10月31日。設定は、もちろん田んぼに水が必要なもっと早い時期ですけど。
松明を燃やしたり祈りの言葉を唱えるのは、東前山や西前山の住民の方々を始め募集に応募していただいたエキストラのみなさん。昭和30年代の設定ということで、それなりの服装もしてきていただています。みんなで集まって綿密な打ち合わせも。
池の北側の土手には、長さ3メートルの竹の先に結びつけられた麦わらの松明が並べられています。
明るいうちに実際に松明に火を灯すリハーサルもやりました。
夕暮れ近くになると、エキストラのみなさんがそれぞれ土手のところで松明を一本ずつ手にして準備。池の反対側、南側の池の中からはカメラマンがカメラを向けています。
いよいよあたりが暗くなってきました。本番です。松明に火が付けられ、暗くなった土手の上は「火の柱」がずらりと並んでいます。そしてそれが池の水にも映ってるんですね。
百八手は、滅多にみられるものではないので、一般の住民の方々も見学に来ています。
雨乞い行事の百八手は、別所温泉の岳の幟などとともに、塩田を中心として認定されている日本遺産の「構成文化財」になっています。
三重塔や仏像などと違っていつも見ることができないものなのですが、いつかまた再現してほしい。とは思いますがなかなか難しい。となれば、映画の大画面で良く見ておこう。
そしてなにより思うこと。それは、この百八手の場面だけでなく、昭和における塩田の歴史を我々に見せてくれるこの映画そのものを、小説とともに「塩田平の文化財」にしていきたいことなんです。(F森)














