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「塩田平の文化財クイズ」の問題をもうちょっと掘り下げて解説するシリーズの4回目。
今回は、塩田平にあるお寺の宗派に関するものです、
クイズの問題。「鎌倉時代、樵谷惟仙(しょうこくいせん)が開山した時の安楽寺の宗派は、次のうちどれでしょうか?」
1 臨済宗 2 曹洞宗 3 天台宗 4 真言宗
正解は1の「臨済宗」です。
安楽寺は、今は曹洞宗なのですが、樵谷惟仙がお寺を開いたときは臨済宗だったのです。同じ禅宗ですが、栄西禅師を祖とする臨済宗は、道元禅師が始めた曹洞宗より早く広まり、当時は武家社会を中心にとても栄えたようです。ちなみに、1枚目の写真の右側が樵谷惟仙、左側が2世の幼牛恵仁です。この像は、「頂相」(ちんぞう)といって、禅僧の肖像ですね。安楽寺に安置されています。2枚目の写真は、安楽寺の本堂です。
安楽寺は、室町時代になると廃れてきてしまい、江戸時代にもうすぐなるという1580年代に、高山順京(こうざんじゅんきょう)という僧によって曹洞宗の寺として再興されました。
こうした、宗派が変わったお寺はほかにもあって、龍光院がそうです。塩田北条氏の2代目国時がお父さんの義政の菩提を弔うため1282年に創った龍光院も、当初は臨済宗で、その後、やっぱり衰退し、関ヶ原の戦いの次の年、1601年に曹洞宗になりました。ここはお寺の名前もその時に変わって、寺ができた当初は、「仙乗寺」とか「千住寺」とかという名前だったそうです。
塩田にあるお寺の宗派を見ると、「寺」とか「院」と名の付くお寺が17あるのですが、曹洞宗が6つ、真言宗が同じく6つ、浄土宗が4つ、天台宗が常楽寺の1つです。
曹洞宗では、安楽寺と龍光院のそれぞれの住職が「出世寺」を創った所があり、安楽寺では「法輪寺」や「龍昌院」、龍光院では「龍澤寺」がそうです。ここで修行して安楽寺などの住職などになっていく僧侶がいたのですね。
真言宗は、弘法大師空海が始めた宗派。塩田では弘法大師にまつわる言い伝えが多く、シンボルの山「独鈷山」は、弘法大師が、真言宗で使う「独鈷」という仏具を埋めたことから名が付いたとされています。前山寺や中禅寺などは、弘法大師が最初に創ったとされ、禅宗のお寺より古いのが特徴です。前山寺は「信濃四談林」という真言宗の中でも中心的なお寺で、「未完成の完成塔」と呼ばれる三重塔は有名ですが、3枚目の写真にある分厚い茅葺屋根の本堂も、昨年、国の登録有形文化財に指定されました。
お寺の建物やご本尊で、その宗派の特徴が出ているものもたくさんあるので、そうした違いを見てみるのも、お寺めぐりの楽しみ方かもしれません。(F森)