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今回は、手塚の民家に秘蔵されている「唐糸観音像」を紹介します。
写真のとおり、この観音様は、穏やかな顔立ちで、全体もとても美しい立像です。一般のお宅の奥にあるお堂に安置されていて、普段は見ることができないのですが、上田市教育委員会の文化財調査があるということで、一緒に拝見することができました。
この観音様は、鎌倉時代の伝承につながっているのですが、その伝承がとても物語性があって素敵なお話なんです。
木曽義仲と言えば、平安時代末期に権勢を振るっていた平氏を打ち破った名将です。最後は源頼朝に討たれてしまうのですが、その重臣に手塚太郎金刺光盛という方が手塚におられました。かの手塚治虫さんの先祖とも言われていて、NHKの「ファミリーヒストリー」でも取り上げられました。その光盛に「唐糸」という娘がいて、鎌倉で頼朝に仕えておりました。木曽義仲と頼朝が争っている時期で、唐糸は頼朝をなきものにしようとしたのですが、見つかって山の石牢に入れられてしまいました。
手塚には唐糸の娘で「万寿姫」という方がおられまして、彼女は母を助けようとはるばる鎌倉に行ったのです。いろいろ経過はあったのですが、頼朝の前で今様を謡い舞う機会を得ることができました。
その舞いを観た頼朝は感激し、次の日万寿姫を招いて「国はどこだ」「親は誰だ」などと問い、褒美を取らせようとしたところ、万寿姫が「実は・・・」と母のことを話し、それを聴いた頼朝が、唐糸を牢から出し、娘とともに手塚に帰してくれました。
というお話で、その後、この家は途絶えてしまうのですが、地域の方々が親子のことを称え、手塚氏の居館の敷地内にお堂を建て、唐糸観音像を安置したということです。
塩田には数多くの民話や伝承がありますが、その中でもとても印象的な話です。この観音像を見ていると、唐糸、万寿姫の親子を想像させ、伝承をより身近に感じさせてくれます。(F森)