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がんばれ別所線! 二つの三重塔と大日如来像

上田電鉄別所線は、とうとう3月28日に城下―上田間の赤い橋が復旧し、全線開通しました。
それを記念していろんなイベントが開催されましたが、文化財好きな者には画期的な催しがありました。
この日、別所温泉の安楽寺三重塔信濃国分寺三重塔のそれぞれの中にある大日如来像が公開されました。普段は扉が閉まっていて見ることができないのですが、一日だけの特別公開です。
安楽寺の三重塔は国宝。八角の塔は全国に一つしかなく、13世紀終わりの鎌倉時代末期に建てられたと考えられています。安楽寺は禅宗のお寺です。鎌倉時代に創建されたときは臨済宗でしたが、戦国時代末期に曹洞宗になっています。ということも影響しているのでしょうか、ここの三重塔の建築様式は「禅宗様」と言われるものです。屋根を支える「垂木」(たるき)が放射状になっていることや、垂木の下を横に走っている「貫」(ぬき)の先に「木鼻」という彫り物が飛び出していることなどが特徴です。
この三重塔の真ん中に祀られているのが大日如来像。写真撮影は認められなかったので残念ですが、「智拳印」という大日如来特有の指の組み方(印)で、左手の人差し指を立ててそれを右手で握る形。写真では見たことがあるのですが、実物は初めて。カメラに収めたかったなあ。

 次に向かったのは信濃国分寺。千年以上前に信濃の国の国府が上田に置かれ、信仰の中心の国分寺も建立されました。今の国分寺資料館のあたりです。その後、時期は定かではないですが、今のところにお寺ができました。境内にある三重塔は室町時代の中期ではないかと考えられていて、安楽寺の三重塔や青木村大法寺の三重塔よりはあと、前山寺の三重塔よりは前に造られたようです。建築様式は「和様」。安楽寺の三重塔とは対照的で、垂木は扇状ではなく平行、木鼻はありません。ちなみに、前山寺の三重塔は禅宗様と和様が混ざっていて、「折衷様」と呼ばれています。上田で3つの建築様式を見ることができます。

 三重塔の中にある大日如来。写真撮影ができたので、パシャパシャ。安楽寺と同じ「智拳印」です。
別所線全線開通に合わせて行われた今回の大日如来像特別公開。同時に公開なんていうのはたぶん初めてでしょう。赤い橋が台風で落ちなければこんな歴史的な公開はなかったのです。とはいえ、橋が落ちてからこの日までの利用者や上田電鉄、上田市役所などの人たちの苦難・苦労を考えると単純に喜んではいけないのかもしれません。自分も別所線を利用する者としてとても複雑な心持です。言えるのは、復旧と同時に本当に喜ばしい出来事ではありました。(F森)

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