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日本遺産短編小説にまつわる話⑥ 舌喰池の人柱伝説

「信州上田10ストーリーズ」の10本の小説に出てくる日本遺産「信州上田・塩田平」の構成文化財についてお話するシリーズ。最終回です。
今回は、秦野邦彦さんの「円盤が来た日」
上田に住む陽ノ宮碧は、東京の大学に入学。映画サークルに入ったのですが、調査のため地球に来た宇宙人だという部長をはじめ変人だらけの部員の変なサークルです。歓迎会だと言って上田に行くことに。
上田に着くと、北向観音や安楽寺、別所神社、常楽寺を訪れ、別所温泉の旅館で食事。夜の上田をドライブに出かけたところで空飛ぶ円盤を発見。宇宙人だという部長が「円盤は水が飲みたいんだ」ということで舌喰池に行くと、円盤は水を飲んで活力を取り戻す。
仲間からはずれた赤ちゃん円盤だったのですが、円盤のグループはレイラインでエネルギーをチャージしているのだとか。
そして、珍しい池の名前の由来を碧が語ります。
この話の最後に出てくる舌喰池の名前の由来。人柱伝説です。
 昔、大池の工事のとき、土手から水が漏れてどうしても十分に水を貯めることができませんでした。村人は議論のすえ、苦渋の決断として「人柱」をたてることになり、くじ引きで決めることになり、くじを引き当てたのは村はずれで一人住まいの美しい娘さんでした。娘さんは悲しみの末、人柱にたつ前の晩に舌をかみ切り、池に身を投げて死んでしまいました。
村人は娘さんの遺体を手厚く供養し、それ以来、池の漏水が止まりました。こののち村人は、この悲しい出来事を忘れてはならないと思い、「舌喰池」と呼ぶようになり、水を一層大切に使うようになったということです。
これは伝説、実際にはなかったことかもしれないのですが。
でも、もしかしたら現実のものだったかも。
というのは、昭和50年代に舌喰池周辺の圃場整備が行われた際、池の北側の田から墓石が4基出土しました。これらは今、無量寺の境内にあります。
無量寺といえば、弘法大師が彫ったといういわれのある「元木の地蔵」があるところですね(2枚目の写真)。
 で、この4基の墓石の中に「○永○未歳 早世霜元童女位」という戒名の石塔があります(3枚目の写真)。この年は1631年になりますが、民話に因むものとすれば、この娘さんの墓石で、舌喰池の工事から10年目に、人柱になった娘さんの縁者が建てたとも考えられています。
まあ、実際あった話であろうが架空のことであろうが、とても悲しい話には違いありません。
だからなのか、こんな話になっていたらどうだろうということで、10ストーリーズには、この話をモチーフにした小説があります。
「カッパのレイライン初巡礼」を書いた山本敦さんのもう一つの小説「シン説・舌喰池異聞」。悲劇に終わらなかった話にグッときました。(F森)

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