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御神木と龍のちょっと悲しい物語 前山塩野神社

 前山にある塩野神社。千年以上前の「延喜式」という国の公文書に名前が出てくる古くて格式の高いお宮です。創建は天武天皇の時代(約1500年前)に出雲大社の分霊を勧請して、独鈷山の「鷲岩」に祀られたのが始まりで、その後、参拝が不便だということで今の場所に遷されたと言われています。塩田には保野にも塩野神社があって、延喜式に出てくる塩野神社はどっちのお宮なのかというのは昔から論争があって、江戸時代にはお上に訴えて、かえって両方とも塩野神社という名前を使ってはいけないなんてことになったこともあったようです。明治時代になって両方とも今の名前を使うことが許されたということですが、今も決着は見ていないということですかね。
その前山塩野神社に伝わるお話です。塩田文化財研究所が平成5年に出版した「塩田平の民話」という本に載っています。


お宮の本殿には「龍」が彫られています。左右の壁の斗栱(ときょう)という建物の軒を支える組み物からは龍が顔をのぞかせていますし、正面の扉の左右にはのぼり龍・くだり龍の透かし彫りがあります。この龍、夜になるとお宮の入り口近くにある御神木のケヤキの木を遊び場にして、上ったり下りたりしているうちに枝が折れて枯れそうになりました。そこで、困った村人は、龍の目玉をえぐり取ってしまい、目が見えなくなった龍は暴れることができなくなりました。
ある夏の日に大夕立があり、真っ暗になって電光がひらめき、大きな音とともに御神木に雷が落ち、木は燃え始めました。雨はやみましたが火は消えず、とうとう根元の少し上から折れてしまいました。村人たちは、龍の目玉をえぐるようなむごいことをしなければ、龍が天に昇ってもっと雨を降らせて火を消してくれたかもと、たいそう後悔したそうです。
そして、今はその御神木に屋根をかけて大切に保存しています。

 

 


本殿の龍を見ていると、確かに今でもここから抜け出していきそうな迫力のある彫り物です。ほかにも天女や見た目ウサギのような彫刻もあり、見ごたえがあります。拝殿も、信州では諏訪大社以外にはない二階建て。「勅使殿」と呼ばれていますが、その昔、朝廷の使者を迎えたところだということです。今の本殿や拝殿は江戸時代のものだそうで、塩田の文化財としてはそれほど古くはありませんは、拝殿の前でお参りをしただけではもったいない(?)ような見事な建物です。(F森)

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