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今回は、下小島地区の二つのお宝です。
下小島は、塩田では一番北側にあり、独鈷山や大明神岳などの山から流れてくる川の下流部に当たります。
塩田の中では新しくできた地区で、とは言っても江戸時代の話ですが。1683年といいますから、江戸幕府ができて約80年後、当時の上田藩主仙石政明の勧めでこの地区に16戸の人たちが移住し、水田の開拓をします。上田藩は、江戸時代を通じて新田開発を進め、このためのため池もたくさん造っています。この一環だったのでしょう。隣の下本郷も江戸期に新田開発を行ったところです。
下小島で開拓に携わった人たちが、入植した9年後の1692年に祀ったのが、今回最初にご紹介する「延命地蔵」です。神畑の方から別所温泉に通じる通称別所街道からすぐ北側にあるのですが、細い道の脇にあるので、なかなか気づきません。静かな環境の中で祀られています。
厳しい開拓の作業の中、地区の安寧を祈願して建立されたものと言います。そしてこのお地蔵さん、雨乞いにも御利益があるということで、大正13年の大干害のとき、昼夜交替で鐘をたたき祈ったところ、1週間後に雨が降ったとのこと。この年の干害は、近代になって塩田で最もひどかったとも言われていますが、これがきっかけとなって、「ため池のため池」と呼ばれ、下流のため池に水を供給する100万トンの貯水量を持つ沢山池が造られました。
もう一つの文化財が「大日堂」です。延命地蔵の建立から約10年後の1701年に建てられています。上田で大日堂というと、小泉大日堂が有名ですが、そこから分祀されたものです。
大日堂ですから、中には大日如来が安置されています。今のお堂は、昭和60年に建替えられたもので、下小島発足300年を記念して行われたということです。
この二つの文化財、新しい土地に移住して、開拓という厳しい仕事を始めた人たちの思いが詰まったものなのでしょう。大日堂では毎年1月に「大日堂祭」が行われているそうです。寿命を延ばしてくれる延命地蔵と、偉大な太陽であり、密教の最高位の大日如来、これからも下小島の人たちを見守ってくれることでしょう。(F森)