お電話でのお問い合わせ0268-38-8600
今回ご紹介するのは、前山地区にある中禅寺の薬師如来坐像です。
穏やかなお顔。左手の掌に乗った薬の壺(やっこ)。人々の健康を願うお薬師様らしい姿です。
国の重要文化財。普段は薬師堂の扉が閉まっていて、正面の格子戸を通してしか拝見することができないのですが、日本遺産認定一周年記念として、6月20日の一日だけお堂の中を公開していただきました。
正面からの写真ではなく、坐像の左斜め前からのものを掲載したのは、お寺のご住職が一番好きな角度だということで。穏やかなお顔が一番よくわかるとか。
造られたのは鎌倉時代初期と言われます。薬師堂も同じ時期で、今から800年以上前になります。薬師堂も重要文化財に指定されていて、長野県内はもとより、関東を含む中部地方で一番古い木造建築だそうです。
そのお堂も、そしてお薬師様も共に800年。薬師堂の横にある本堂は何回も火災で焼けているのですが、ここは無事です。
この薬師如来坐像ですが、参拝に来られた方がこんなことを言われました。曰く「坐像の下が像より細いので不安定に見え、よくこれで長い間倒れもしなかったなあ。独楽(コマ)の上に座っているようだ」。
しばしば像を見ている者としては、こういうものだと特に感じなかったのですが、虚をつかれました。確かにほかのお寺の坐像と比べると特徴的です。長い間には大きな地震もあったでしょうが、無事だったということは構造的には安定しているんでしょう。それと、デザインとしても「いいなあ」って感じます。
横にあるのは「十二神将」の一体。薬師如来をお守りする神様で、本来は12体あるのですが、ここでは今は1体しか残っていません。しかもこの像は、腕がなく、また、本来は頭に十二支の動物を乗せているのですがそれもなく、どの神将かも不明です。薬師如来より造られたのは後の様ですが、それでも室町時代。長い間薬師如来を守ってきました。1体になっても、これからもよろしくお願いします。(F森)