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前山にある中禅寺。東日本最古の木造建築物といわれる薬師堂やその中に安置されている薬師如来坐像が有名です。いずれも国の重要文化財。
今回ご紹介するのは、その中禅寺が所有する「涅槃図」です。涅槃図というのは、お釈迦様が亡くなるときの様子を描いたもの。この涅槃図は江戸時代に作られたもののようです。
中央には台に横たわったお釈迦様。頭は北側にあり、お顔は西を向いている。「北まくら」というのは、人が亡くなったときにやりますよね。それはお釈迦様がそうだったから。縁起がいいとか悪いという問題ではない。仏教から来ているんですね。
お釈迦様の周りには、最期の時を悲しんで、たくさんの人たちが来ています。右側にはお釈迦様の足をさするおばあさん。手前にはうつぶせになって泣き悲しんでいるお弟子さん。観音様や不動明王など仏さまたちも台を囲んでいます。
図の上に描かれているのは、天上にいる女性たち。真ん中におられるのは、お釈迦様のお母さま。「摩耶夫人」(まやぶにん)とおっしゃいます。お釈迦様が生まれてすぐ亡くなってしまった方です。起死回生の薬を届けようとしたのですが、それも実らず、お釈迦様は亡くなります。
図の下に目を移すと、たくさんの動物たち。彼らもお釈迦様の死が近いことを知って方々から駆け付けたのです。
牛や象、虎、たくさんの種類の鳥たち。白い象の手前にいるのは「サイ」なんだそうです。江戸時代、みんなサイなんて見たことのないので、河童のように甲羅を背負ってるし、角はあるけど顔は馬みたい。小さくて見えないと思いますが、右下にはネズミも。ネズミは牛の頭に乗せてもらってここまで来たのです。ここに着く直前、牛の頭からぴょんと飛び降りて、動物の中では会場に一番乗り。で、次に牛。そしてそのあとには虎、ウサギと続きます。そう、干支の順番はここに早く来た方からになっているのです。
こういうことは、図を見ていただけではわかりません。ちゃんと解説してくれる人がいるんです。塩田公民館で行われている「塩田の歴史・文化を語る集い」というところで毎月開催している講演会で「涅槃図の絵解き」をお聴きしました。
その講師のお話だと、中禅寺の涅槃図は珍しいものだそうです。涅槃図自体は全国的に数多くあるのですが、お釈迦様の周りにいる人たちの名前が図に表示されているのです。だれだかすぐわかる。貴重なお宝です。お薬師様に負けない中禅寺の文化財であります。(F森)