ブログ

日本遺産短編小説にまつわる話① 将軍塚古墳

「信州上田10ストーリーズ」。日本遺産「信州上田・塩田平」の構成文化財を題材にした10本の短編小説集です。5人の作家が2本ずつ書いています。
この5人の作家が書いた中から1本ずつ選んで、そこのテーマになっている文化財を紹介していきます。
最初はペリー萩野さんの作品「五尺七寸の光」に登場する「将軍塚古墳」です。
 話は、呉服商の娘おさんが主人公。子どもの頃からとても背が高く、そのため18歳になっても縁談がない。あるとき、祖母のお供で別所温泉に行った時、黄金が埋められているという将軍塚を3人の男が掘り返そうとしていた。それを見たおさんは、とっさに駕籠屋の竹の棒を手にして男どもを撃退。それを見ていた海野宿の若旦那が彼女を見初め、めでたく結ばれた。
この将軍塚は、別所温泉駅から温泉街に向かう道と常楽寺に向かう参道が交わる所の角にあります。高さ2メートルほどの円墳ですね。古墳時代後期のこの地方の豪族の墓と考えられています。
これがなぜ「将軍塚」と呼ばれるかというと、平安時代初めの将軍「平維茂」(たいらのこれもち)の塚と地元で伝わっているからなのです。
 塚の上には、維茂を供養する石碑と多層塔が建っています。
彼の塚がなぜここにあるのかという話です。
当時、戸隠山に住む鬼女「紅葉」(もみじ)が妖術を使って近隣を荒らし住民を苦しめていたので、天皇の命で彼が退治に向かいます。
そして、最初劣勢だったのですが、北向観音から受けた宝剣で鬼女を倒したということです。
そんなことから、これが彼の塚だと、この別所の地に伝わっているのです。
ちなみに、戸隠の近くに「鬼無里」(きなさ)という所がありますが、それは鬼女がいなくなったから付いたのだそう。長野市に合併する前は「鬼無里村」という村だったのです。
宝剣を授けた北向観音の本堂の中には、維茂が鬼女と戦う様子が描かれた絵馬が飾られています。江戸時代に奉納されたもののようですが、色もしっかり残っていて、迫力のある絵ですよ。
 小説の最後は、おさんが嫁いで30年あまり後、目が見えなくなった夫と生島足島神社にやってきて、東の鳥居から昇る夏至の朝日を見ている場面です。将軍塚での出会いからここまでの道のり。ちょっとホロリとさせられる物語でした。(F森)

関連記事

  1. サクラもいいけど カタクリもきれい
  2. 生島足島神社で見た! 冬至の日の入り
  3. 塩田の古墳③ レイライン上の古墳
  4. 塩田平を歩く -塩田平を一望できる見晴し台-
  5. 塩田スイーツ物語 -小豆餡にこだわったどらやきと大福-
  6. 常楽寺美術館の企画展 テーマは「寅」
  7. 塩田の館で1日限りの健康イベント
  8. ため池に白い蓮の花が咲いた!

最近のブログ記事

PAGE TOP