お電話でのお問い合わせ0268-38-8600
「信州上田10ストーリーズ」の10本の小説に出てくる日本遺産「信州上田・塩田平」の構成文化財についてお話するシリーズ。2回目です。
今回は、橋本達典さんの「想い出がいっぱい」に登場する「レイライン」です。
小説の主人公はシュウイチ。高校まで上田で育ち、今は東京に一人で住む50代の男性です。実家の母親が身体の具合が悪いということで、上田に帰って一緒に暮らすことになりました。
高校の頃は、毎日深夜ラジオを聴き、特に好きなイギリスのロックバンドの曲をリクエストしたりしています。そんな中、ヒノミヤアオイという同級生と付き合うようになります。いつも赤い服を着ているポニーテールの彼女。喫茶店や映画館に二人で行くようになりました。
ところが、彼女が一つ年上だということが分かって、なんとなくよそよそしさが出て付き合いはおしまいに。
そんなことを思い出しながら、母親を病院に連れて行くと、看護師長さんが母親を親身に世話してくれました。病院の帰り、車に乗っていると、隣の赤い車に近づいてくるのはポニーテールの看護師長さん。彼女のスマホから着信音が聞こえます。昔好きだった曲。思わず車から出て彼女に声をかけました。
このあと二人はどうなるのでしょうね?
で、病院に行ったのは冬至の日。レイラインの話が出てきます。レイラインは、神社仏閣や山など聖なる所が一直線上につながっていることで、特に、その直線が夏至・冬至や春分・秋分の太陽の光と重なるのが日本では重要視されています。
日本で有名なのは、千葉の玉前神社や富士山、元伊勢内宮皇大神社、出雲大社などの聖地が直線で結ばれ、それに沿って春分・秋分の朝日が望める「ご来光の道」。
上田では、夏至の朝日と冬至の夕日が烏帽子岳・信濃国分寺・生島足島神社・泥宮・女神岳を一直線に照らすものが代表的です。
全国の半分くらいしか雨が降らず、日照時間の長い上田ですが、夏至の朝と冬至の夕方に太陽がはっきり出てくれるのは、ここ数年あまりありません。でも、生島足島神社なんかでは、カメラやスマホで写真を撮ろうという人たちでいっぱいです。
このお宮では、東の鳥居から夏至の朝日が昇り、西の鳥居に冬至の夕日が沈みます(1枚目の写真)。そして、その西にある泥宮からは、夏至の朝日が鳥居を通して烏帽子岳から昇るのが見え(2枚目の写真)、冬至の夕日は拝殿に沈みます(3枚目の写真)。
この二つのお宮は深いつながりがあり、神様が泥宮から生島足島神社に移ったとも言われています。昔は両方の神社の鳥居を結ぶ真っすぐな参道があり、今も生島足島神社の御柱の時は、泥宮のある上本郷の自治会長が一の柱を引く習わしになっています。
聖地というような所が一直線に結ぶなんて、線を引けばたくさんある聖地のどこかがその上にあるはずから、別に不思議なことはない。のかもしれませんが、この塩田のレイライン、泥宮の南西にある手塚の皇子塚古墳にもつながっていて、なんらかの意図があってそれぞれの場所に造られたのではないかと感じます。そういう風に考えた方が面白いですしね。(F森)