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塩田は雨の少ないところ。加えて大きな川がないので、米作りにはため池が欠かせません。
でも、水が多いか少ないかということと、おいしい水があるかどうかは関係がないのです。
塩田では、「名水」と言われる湧水が多く、前には山田神社境内の「山田湧水」を紹介しました。
今回紹介するのは、その名も「竜王湧水」。
日本遺産「信州上田塩田平」のテーマである「龍と生きるまち」にふさわしい名前ですね。
手塚の「舌喰池」の横から金井という集落を上がっていくと、「竜王湧水」と書かれた解説板が道筋にあります。その横は「竜王下池」というため池。
そこから未舗装の道を進んで、シカやイノシシ除けの柵を開けてさらに進むこと約5分。竜王湧水に着きました。
奥には立派なサワラの木が立っています。7本が一体となっていて、その根元近くには「竜王社」の祠。その下から水が湧き出しています。
ご神木の根元から水が湧き出しているようで、竹筒から落ちてくる水をありがたく頂戴します。
ここは、数年前、大雨で湧き水の設備に被害が出ました。そこで、塩田まちづくり協議会の西塩田支部の方々が昨年整備をしてくれました。そのおかげで前と同じように湧水を楽しむことができます。
いや、前以上に立派になったのが、「竜王湧水」と書かれた木の看板です。揮毫したのは昭和2年(1926年)生まれの手塚の男性。今年99歳になられます。今も習字をされていて、先日一緒に小布施町に行ったとき、「いつも買うから」と和紙屋さんで和紙を購入されていました。長寿の方の手になる看板がある竜王湧水。災害に負けずにこれからずっと良い水をだしてくれますように。
と言いながら、実は昔も大きな災害がありました。干ばつです。江戸時代末期の安政4年(1857年)にこの湧水が枯れてしまいました。もちろん村の井戸も同様です。
困った村人は全国行脚をしていた比叡山延暦寺の願海和尚に祈祷を頼みました。
願海は、比叡山で最も苦行とされる「千日回峰行」を31歳で満行し、「大行満願海」と称される偉大なお坊さん。手塚や十人村の方々と交流があり、この時祈祷をして、4日目に水が出たそうです。
竜王湧水の下の集落である金井の集会施設の前には「加持湧水霊泉塔」と書かれた石碑が建っています。願海和尚の手で揮毫されたもので、このときの記念に建てられました。
竜王湧水の裏にそびえるのが女神岳です。雨は少なくても、山や森林の恵みとして湧き出す水。加持祈祷しなくてもおいしい水を出し続けてほしいものです。(F森)