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断崖絶壁の「鴻の巣」は、その昔鉱山だった!

 「鴻の巣」。幅約200m、高さ60mもある白っぽい断崖です。緑色の森の中に白い壁なので、遠くからでも良く見えます。塩田ではほかに見ることはできません。名前もユニーク。コウノトリがこのあたりに巣を作っていたからとも言われています。
ここは、1千万年ほど前に堆積した礫岩(れきがん)や砂岩でできています。崖は縦に何本もの亀裂(と言っていいか?)があり、形容は難しいのですが、不定形の石の柱が林立しているようにも見えます。
 そして、横には赤っぽい色のしま模様もあります。3年前に作られた「塩田平かるた」では「垂直に 切り立つ鴻の巣 しま模様」と読まれています。これは鉄分の色なのだそうです。
地質研究者の山辺邦彦さんによると、鴻の巣は、ベンガラ(弁柄)という土器などの彩色に使われる顔料の産地だということです。褐鉄鉱をここから掘り出して、焼いてベンガラを作る。礫岩の地層を崩して褐鉄鉱を掘り出したために、あのような地形になったのだそうです。
で、ベンガラを何に使ったか?
弥生時代から古墳時代に、ベンガラは土器の表面や古墳の石室の壁に塗られていたようです。赤い色、魔よけの意味もあったとも考えられます。
この鴻の巣の場所は、下之郷の奥、東山山麓の南東にあります。そして、東山にはたくさんの古墳があるのです。「下之郷古墳群」といいます。3枚目の写真は、その中でも大きなもので、名前は「塚穴原1号墳」
 下之郷古墳群は、6世紀から7世紀ごろのものだそうで、鴻の巣で産出されたベンガラが使われていたかどうかは分かりませんが、弥生時代からこの頃までだとすると、何百年もの間、褐鉄鉱が掘り出され、ベンガラが作られていたことになります。あの、ほかでは見ることのできない地形ができたのも、長年人の手で少しずつ礫岩層が削られていった結果なのかもしれません。
今まで、何千年もかかって自然にできた風景なのかと思っていましたが、人の歴史が絡むとなると、だれが掘ったのか、古墳にどういう人が埋葬されたのかなどなど、知りたいことがまたまた増えてしまいました。(F森)

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