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常楽寺美術館の企画展 その名も「名宝」展

常楽寺と北向観音堂が開創されて今年で1200年になることを記念して開催されているのが常楽寺美術館の「常楽寺の名宝」展です。12月25日まで開催されています。
 「名宝」ということで、有名作家の作品や珍しいものがたくさん展示されています。
目を引くのが葛飾北斎の絵。最初の写真は「紅葉狩」。鬼女紅葉(きじょもみじ)を平維茂(たいらのこれもち)が退治する伝説の一場面を描いたもの。富嶽三十六景とは趣が異なり、戦いの臨場感が伝わります。
北斎は、80歳代の時、今の小布施町を2度訪れ、岩松院の天井絵「八方睨み鳳凰図」や祭屋台の天井絵を残しました。この「紅葉狩」もそのころの作と考えられているようです。
ほかには、北斎作と伝わる「劉備壇渓途河図」という三国志を題材にしたものも。蜀を建国した劉備玄徳が愛馬とともに激流に飛び込もうとする場面を描いたものですが、激流の波なんかは富嶽三十六景の中でも有名な「神奈川沖浪裏」の波と同じように見えます。
そして、ほかの有名どころの作家と言えば、天台座主も務められた常楽寺の半田孝淳元住職と親交のあった棟方志功「騎象普賢菩薩像」「騎獅文殊菩薩像」もあります。常楽寺美術館では棟方志功の10点ほどの書や作品が収蔵されているということで、この2点は企画展で時々展示されます。
常楽寺と北向観音堂の開創1200年だからなのか、「慈覚大師円仁坐像」もあります。慈覚大師と言えば、前回のブログでご紹介した、今の常楽寺の本堂裏手、石造多宝塔のある所から火柱が立ち、中から千手観音が出現したときに祈祷をしていて、観音様のお告げでその像を彫りお堂に安置したという、常楽寺と北向観音堂を創った方、開祖ですね。
 法界定印という手の組み方で坐禅をされている姿。この企画展では、中国で天台宗の実質的な開祖とされる天台智顗(てんだいちぎ)の姿を描いた絵も展示されていますが、この方は「天台小止観」という坐禅の作法などを説いた書物を残しているのです。慈覚大師の像は、その教えのとおりの作法で坐禅しているのでしょう。
 そして、珍しいところでは、「塩田陸奥守北条国時像」が展示されています。父親の代に鎌倉から塩田に移住し、60年近く塩田を治めた塩田北条氏の2代目の方です。前山の龍光院を創った方であり、安楽寺の八角三重塔の創建にも関係したと思われます。北向観音堂を修理したということですが、鎌倉時代の文化財が多く残る塩田にとっては大切な人です。
1333年に鎌倉が新田義貞に攻められた時、息子とともに出陣し、親子ともども討ち死にしてしまうのですが、死を覚悟して自分で刻んだ像と言われているそうです。
北向観音堂では、10月11日から11月9日まで御開帳が行われます。それも楽しみですが、せっかくの名品ぞろいのこの企画展ですから、美術館まで足をのばしてほしいものです。(F森)

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