「独鈷山」。塩田を代表する山ですね。塩田の多くの所から望め、小中学校の校歌にも歌われているシンボルの山。
この山の名前を題名にした小説が2023年に出ました。
昭和30年代の塩田が舞台です。小学生が東京からの転校生と出会い、一緒に遊んだり農作業をしたりする中で友情をはぐくみ、でも最後に別れが待っているという物語。
その中では、道祖神祭りやどんどん焼き、ため池での水泳やスケートなどの子どもたちの遊びのほか、田植えや水の管理、稲刈りなどの農作業、ため池での雨乞いといった、当時の塩田の様子も描かれています。
著者は黒坂正文さん。日本でのコカリナの創始者と言える方です。演奏会のほか、東日本大震災で被災した松を使ってコカリナを作り地元の子どもたちにプレゼントするなど、各種のボランティア活動もやっておられます。
黒坂さんは、東前山の前山寺のすぐ近くにお宅があって、高校まで通い、東京の大学卒業後音楽家になりました。
この小説は、黒坂さんの小学校の時代をそのまま描いたような内容じゃないでしょうかね。そして、話に出てくる遊びや田んぼの仕事は、やり方は違っても残っているものが多いです。ため池での水泳やスケートはさすがにできなくなりましたけど。
この小説を「映画にしよう!」という動きが、出版後すぐに浮上しました。塩田まちづくり協議会でも塩田の方々に署名をお願いし、1500名を超える署名簿を関係先に送りました。
そしていよいよ、映画化が実現します。
7月18日の午後、塩田公民館の大ホールでそのスタートとなる「映画制作発表の集い」が開催されました。
200名定員のホールは定員を大きく超えて超満員。
第一部は「制作発表」。映画の脚本と監督を務める別所温泉在住の野村展代(のぶよ)さん、映画制作会社社長の竹本隼さん、そして映画化を推進してきた「小説独鈷山の映画化を進める会」会長の母袋創一さんのお三方がステージで映画について語りました。
この中で野村さんは、すでに制作の準備を進めていること、シナリオは最終段階、秋ごろから映画の撮影に入り、来年には完成させたいというお話がありました。
そして、撮影の場所として話の中で上がったのは、前山寺や生島足島神社、そしてさくら国際高校の校舎や庭に展示されている別所線の電車「丸窓電車」。小説の時代に走っていた別所線のシンボル的電車です。
そして、注目すべきは「百八手を撮りたい」
雨乞い行事で、塩田では昔から行われてきていて、黒坂さんも実際に経験したのだとか。
たくさんの大きな松明をため池の周りで一斉に火を付けて、みんなで「アメ フラセタンマイナ」と祈ります。
ここ15年ほどでこの百八手が何回か再現されましたが、人出はいるし松明の準備やらで、やるのはなかなかたいへんです。これを映画の中で見ることができるのです!
願わくば、ロケのためだけの再現ではなく、一般の人たちも見ることのできるような雨乞い行事にしてほしいなあと思いますね。
第2部は黒坂正文(コカリナ奏者としては「黒太郎」)さん・矢口周美(かねみ)さんご夫妻によるコンサート。
全部で11曲。黒坂さんのコカリナ独奏に、矢口さんの歌と黒坂さんのコカリナ共演、コカリナ演奏のグループも一緒になって演奏するものもありました。
広島で被爆した樹で作ったコカリナの演奏もありました。
澄んだ音色のコカリナとのびやかな歌声。満員の聴衆のみなさんは聴き惚れていました。
話はちょっとずれますが、曲の中に「別所線牧歌」があります。別所線や塩田の文化財・祭りなどが歌いこまれた「まるごと塩田」の曲なんですが、少し前に塩田まちづくり協議会にお問い合わせがありました。お母さまがデイサービスセンターに行っていて、そこでこの曲がかけられたんだけれども、お母さまが「家でも聴きたい」と言われているとのこと。塩田の方ではないのですが、嬉しくなってCDを送ってしまいました。
映画制作は始まったばかり。
資金集めを始め、難しい課題はありますが、なにせ原作者は東前山出身、監督は別所温泉在住、ロケも塩田が多くなるでしょう。小説のストーリーばかりでなく、とにかく「まるごと塩田」です。塩田にとっては前代未聞の映画製作。応援したいですし、エキストラになれば映画で映るかも。
超満員のお客様とその熱気、いい「門出」になりました。(F森)














